何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

PyCon JP 2025で登壇しました

広島開催のPyCon JP

2025年9月26日と27日にPyCon JP 2025のカンファレンスが行われた。 2014, 2015, 2016, 2017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023に続いて11回連続11回目の参加である。 11年前や10年前の実力や能力だったら広島など行けないか、当日の朝に移動してその日に帰るような状態であっただろう。

会場について

会場は広島市平和記念公園の左下にある広島国際会議場であった。 部屋によってはメインストリームから外れた場所にあり、大変そうであった。 メイン会場のフェニックスホールは、吹奏楽やオーケストラの箱としては小ぶりな印象を受けたが、壇上で話すとなるとまた違った光景が見えるのだろう。

聴講した講演について

スポンサーブースにずっといたため、まともに話を聞けなかった。

スポンサーブースについて

スポンサーブースの部屋は中々広く、傍聴席も存在する部屋だった。 ブースはGoldスポンサーで長机1つ分で、1つ上のスポンサーは2つ分である。 昨年は人材系の企業が多かったが、今年は何かしらの製品を作っているところが多かった印象を受けた。 やはりブースを展示しないSilverスポンサーの存在を知らしめることは難しい。 個人情報を書かせるアンケートは回答しなかった。 ノベルティ程度でメールアドレスが収集できるなど思わないほうがいい。

今年は所属する会社も出展した。 今回は、PyCon JPのスポンサーブースに妙に詳しいおじさん枠として色々助言やら簡単なブース説明説明員を行った。 やはり、技術的な内容より、なぜ出展したのか?(妙に詳しいおじさん枠のおじさんが出せ出せと言うから)という質問が多かった。展示はなるべく継続していきたい。

野良サイン会

今年も『サルでも描けるまんが教室』の「第2章~大ヒットへの道」にならい、過去に翻訳や監訳をした本を購入した方にサインをした。サイン会ではないが、オライリー・ジャパンの書籍販売ブースの前になぜか翻訳者が偶然立っている形式である。やはり、自分が関わった本が目の前で手に取ってもらったり、購入してもらえるのは非常にうれしい。 ブースを展開していただき、本当にありがとうございました。

自分の発表『明日からgraphlib、みんなで使おう』について

speakerdeck.com

github.com

今回のCfPでは、初心者向けの講演を広く募集していたので、『気付いたら技術書翻訳者になっていた』というタイトルの、過去10年の流れをまとめた内容を発表するつもりでいた。 『明日からgraphlib、みんなで使おう』は前から存在は知っていたが誰も使っているのを見たことがないgraphlibについて、発表するついでに勉強しておこうと程度の動機でプロポーザルを書いた。 つまり、本命は『気付いたら技術書翻訳者になっていた』であり、『明日からgraphlib、みんなで使おう』はオマケであった。 しかし、実際に選ばれたのは、『明日からgraphlib、みんなで使おう』である。 これが現実である。

『明日からgraphlib、みんなで使おう』が採択されたので、トポロジカルソートの定義やアルゴリズム、graphlibの実装を調べ始めた。 すぐに、graphlibの実装はKahnのアルゴリズムによるものというのはわかったが、そのアルゴリズムの妥当性についてきちんと書かれているものはなかった(多分、kahnの論文か何かに書いてあるはず)。 実際、始点となりうる頂点とそれから出る辺を取り除く貪欲法なのだが、「有向非巡回ならば始点となりうる頂点が必ず存在する」「有向非巡回グラフの部分グラフも有向非巡回グラフである」という性質は暗黙的に扱われている、ように感じていた。 また、証明自体がアルゴリズムになっている構成的証明だったので、証明に関してきっちりと扱うようにした。 その結果、トポロジカルソートの定義にたどり着くまでの定義、有向非巡回グラフの定義にたどり着くまでの定義、両者が必要十分であることの証明、とスライドを書いていたらまったくPythonのコードが出てこない代物が完成した。 とはいえ、graphlibの実装を理解する上には、この証明の構造を知っておくと読みやすくなるので、必要なスライドなのである。 もっと数学的に偏った構成にしてもよかったかもしれないが、それならば「graphlibから入るグラフ理論」というタイトルにすべきであり、ここでgraphlibに一切触れずに終わるのは禁じ手なので、タスクランナーの実装を始めた。まあ、これはオマケであり、実際には何かしらのライブラリを使うべきであろう。または、僕がその何かしらのライブラリのコードを読むべきであろう。

プロポーザルのタイトルについて

今年のプロポーザルは、サブタイトルを付けたものが多い。 メインタイトルに印象的な言葉を載せて、サブタイトルで中身を説明、という構造が多い。 この構造は、おそらくというか邪推であるが、プロポーザルを書いた後に、何かしらのLLMに食わせて、「印象的なタイトルを考えてください」という風にして生成したのでは、とみている。 実際、僕も実際にLLMに食わせてみたところ、「Pythonの力」のような変なサブタイトルを提案してきたのであった。 もちろん、丁重に無視して『気付いたら技術書翻訳者になっていた』や『明日からgraphlib、みんなで使おう』とした。 個人的には、疑問符や感嘆符を使わず、説明的にならず、簡潔なタイトルが好ましいと考えている。 『明日からgraphlib、みんなで使おう』は口語っぽい倒置文で自然に出てきたもので、妙に印象に残るので気にいっている。

最後に

ここ数年、PyCon JPの時期にはひどく疲れている、という状態であったが、今年は比較的健全な状態でPyCon JPに挑めた。 ただ、2日目は1日目の疲れで精彩を欠いた感じであった。 まずは体力をつけるべきである。