何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

『ロバストPython』を監訳しました

ナイルワニの秘密に迫る

2023年3月25日にオライリージャパンから『Robust Python』の邦訳である 『ロバストPython』が発売される。

www.oreilly.co.jp

この度、邦訳の監訳を務めた。 原著の『Robust Python』の存在を知ったのは2021年8月頃、監訳の話が上がったのは2021年10月頃、監訳作業は2022年5月から2023年2月の約10ヶ月であった。

何が書いてあるか

本書ではコードのロバストネスを「絶えず変化しても耐久性が高く、エラーを起こさない」ものと定義している。 また、型ヒントはコミュニケーションの手段である、というのもテーマの1つである。 その意味で、Pythonロバストなコードを書くための本である。

全体で4部構成で、第一部と第二部は型ヒントである。 第一部「型アノテーション」は型ヒントの導入である。 第二部「ユーザ定義型」は第一部を前提にして、型ヒントを設計に生かすともいうべき内容である。個人的に、10章の「クラス」は重要だと思っている。 第三部「拡張性」は第一部と第二部の応用編であり、「型ヒントを設計に生かす」の実践である。 第四部「セーフティネット」は他の部を補完するもので、高度なテストについて扱っている。プロパティベーステストやミューテーションテストについて、日本語でまとまった形で読めるのは今のところこれだけではないだろうか。

監訳作業について

監訳と言っても本によってその役割は異なる。 『ロバストPython』の場合は翻訳に手を入れて精度を高める監修の役目である。 訳語の調整、ソースコードの調整、ローカライズなど多岐にわたる。 個人的に苦労した(?)注釈はP.56にある監訳注である。 普段、仕事とはまったく関係のない、自分の生活とも結びつかないキリスト教の聖書の学術的な研究に関する本を読んだ経験が地味に生かされている。 該当箇所を読んで、すぐに創世記のアブラハムの話や、ヤコブの長子権の話が頭に浮かんだ。 P.325の監訳注も学部で学んだ離散数学の話を持ち込んだ。 同値類の説明にはまず二項関係の話を説明する必要があるのだ。

どこで買えるか

今更「どこで買えるか」という話なのか、と思うが、オライリージャパンさんの本はどこの本屋にでもある訳ではない。 オーム社の常設書店のうち、「オライリー・ジャパンの和書特約店」に限られる。

www.ohmsha.co.jp

近くの書店に売っていなくても、オライリー・ジャパンさんのサイトで電子書籍も入手できる。 また、オライリーのラーニングプラットフォームでも読めるようになるだろう。 ぜひとも、手に取って読んで欲しい。 もし、誤植を見つけたらオライリー・ジャパンまたは僕までメールまたは連絡をしてほしい。 よろしくお願いします。