(一社)情報サービス産業協会のプレスリリースに 『その技術は消えるか消えないか? JISAが読み解く情報技術の近未来 ~通算2万5千人参加の会員アンケートから5年後に必要な技術を予測~』 という興味をそそるものがあった。
その技術は消えるか消えないか? JISAが読み解く情報技術の近未来 ~通算2万5千人参加の会員アンケートから5年後に必要な技術を予測~
読了後、時間を無駄にしてしまったと後悔した。 無駄にしないためにも何故そう思ったのかを整理しておきたい。
予測方法が稚拙
分析の基本データは各企業ごとに利用実績のある技術の回答数の割合である。 10年に渡って調査を続けたらしく、割合の変遷と対数曲線への近似を元に技術の興亡について述べている。 しかし、年数ごとに調査する技術を取捨選択しているらしく、数年しかないものは分析から除外している。 このような方法でわかるのは、「現在使われている技術」が数年後も使われそうかどうか、ということのみで 今後どのような技術が必要なのか、という予測が全く立てることができない。 結局、この分析を読んだ企業は「将来安泰!」と勝手に安堵して現状維持をするのではないだろうか。
標本集団に偏りがある
調査対象はJISA加盟の企業に所属する技術者である。 JISAは所謂SIerやソフトウェアハウスが多く加盟している団体であり、技術者の部分集合であるが技術者の全体像とは程遠く偏りがあると感じる。 日経コンピュータの木村さんのツイートからもそう感じる。
昨日の情報サービス産業協会(JISA)の賀詞交換会で、最近JISAに入ったという新興のITベンダーの人に出会う。「今どき、JISAに入るベンダーがあるんだ」と一瞬驚いたが、まあ当たり前か。ただ、下請け人月商売に染まらんでほしいが。
— 木村岳史(東葛人) (@toukatsujin) 2016, 1月 12
JISAの「5年後に必要な情報技術」予測。見て驚いた。予測はともかく、技術の利用実績では、まだ4割の技術者がCOBOLを使い、アジャイル開発は2割強の人しか実績がない。人月商売恐るべし。
https://t.co/ha8soza76o
— 木村岳史(東葛人) (@toukatsujin) 2016, 1月 13
また、調査対象のプログラミング言語が
とある通りSIerらしい言語ばかりでRubyすらない。 所謂Web系と呼ばれる企業は軒並み対象から外れている。
分析が甘い
10年に渡って利用実績のある技術の回答数の割合を調べ、割合の変遷と対数曲線への近似を計算している。 しかし、「予測結果の詳細」に書いてある分析は精々対数曲線の向きしか使っていない。 要は右肩上がりか右肩下がりか、または横ばいか、という分析のみである。 何故下がったのか、上がったのか、という変化の背後にある要因に迫ることができてない。 高校生の書いた理科の実験のレポートか、学部1年の基礎科学実験の確実に再提出を食らうレポートレベルの分析である。
その他
PDFのファイル名が gonengo_gijutsu.pdf や gijutsu_yosoku_gaiyo.pdf というのを見た瞬間、「あ、このレポートクソかも」と感じた。
結論
このレポートは時間をかけて読む価値は全くない。 批判的に分析したいとか、刺激を求めたい場合に限った方がよい。