何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

『時を超えた建設の道』を読んで

『時を超えた建設の道』を読んだ。

時を超えた建設の道

時を超えた建設の道

http://www.kajima-publishing.co.jp/bookdetail.php?isbn=isbn9784306043060

ソフトウェア開発におけるデザインパターンの発想の元となったクリストファー・アレグザンダーの『パタン・ランゲージ』、それの理論や背景を説明しているのが『時を超えた建設の道』である。

建設という時を超えた一筋の道がある。(P.7 L1)

の一節から始まり時を超えた道を求めるには「無名の質(Quality without a Name)」を知る必要があると説く。 その「無名の質」に到達するために筆者が見出した概念である建設におけるパタンから言語(パタン・ランゲージ)を組み立て、それに基づいて「会話」をする、と。 人々が自ら自宅、街路そしてコミュニティを設計するべきであり、そのための言語が必要である、と。

こうしたり顔で書いてみたが本文は難解で難しい。 私は建築分野は全くの門外漢で何故建築分野であまり流行しなかったのかがよくわからない。 GoFと呼ばれる4人はこの難解な『時を超えた建設の道』『パタン・ランゲージ』からソフトウェア開発のデザインパターンを見出した。 幾分『時を超えた建設の道』で説明されている概念よりも簡略化されているように感じるが上手く切り出したんだなあと思う。 アレグザンダーが自宅、街路そしてコミュニティすべてを扱おうとしたのに比べてソフトウェアの設計に限定したからであろうか。

無名の質という概念を聞いて荘子無為自然という言葉を思い出した。 本文にも無為自然という言葉で説明できるような概念が多く登場する。 自然のあるがままに建設を行うためにパタン・ランゲージを定義したのだからある意味では当然のことであるが。

アレグザンダーは数学科の出身で建築の道へ進んだらしい。 数学の世界とは異なり、現実の世界に何らかの規則性を見出そうとしたら数学のようにはいかず、渾沌としてしまうのかもしれない。

これを読んだからといって今すぐ建築士になれるわけでもなく、優れたアーキテクトになれるわけでもないが、案外こういう知識が ボディブローのようにじわじわと私の中で浸透していくのを期待して本を閉じたい。