何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

事象が起こるまで試行を繰り返した場合の試行回数の期待値

成功するまで何度でも繰り返す

先日、Twitterで以下のツイートを見かけた。

直感的にはそんな気がするが、せっかくなので自分でも計算して徒労感を味わってみよう。

期待値の計算

 0 \lt p \lt 1とする。確率0ならば何度試行を行っても事象は生じず、確率1ならば試行回数の期待値は明らかに1回である。 事象が生じる確率を pとすると、事象が生じない確率は 1-pとなる。

1回で事象が生じる確率は p、2回で事象が生じる確率は (1-p)p、3回で事象が生じる確率は (1-p)^{2}pである。 この論法から、確率 pの事象が起こるまで試行を繰り返した場合の試行回数の期待値は  \displaystyle \lim_{n \to \infty} \sum^{n}_{k=1}k(1-p)^{k-1}p となる。

この無限級数を計算すればよい。 なお、  \displaystyle \lim_{n \to \infty} \left | \frac{(n+1)(1-p)^{n}}{n(1-p)^{n-1}} \right | = \lim_{n \to \infty} \left | (1-p) (1 + \frac{1}{n}) \right | \lt 1 より 級数は絶対収束する。

級数の計算

  \displaystyle S = \sum^{n}_{k=1}k(1-p)^{k-1}とする。  \displaystyle S - (1-p)S = \sum^{n}_{k=1}(1-p)^{k-1} - n(1-p)^{n}より、

  \displaystyle pS = \frac{1}{p} -\frac{1}{p}(1-p)^{n} -n(1-p)^{n}.

以上より、

 \displaystyle \lim_{n \to \infty} \sum^{n}_{k=1}k(1-p)^{k-1}p = \lim_{n \to \infty} \left( \frac{1}{p} -\frac{1}{p}(1-p)^{n} -n(1-p)^{n} \right ) = \frac{1}{p}.

よって、確率 pの事象が起こるまで試行を繰り返した場合の試行回数の期待値は \displaystyle \frac{1}{p}となる。

考察

これは幾何分布と呼ばれる確率分布の期待値計算である。 計算したのちに幾何分布であることに気づいたのが恥ずかしい限りである。