何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

架神恭介『「バカダークファンタジー」としての聖書入門』を読んだ。

人間の物語

架神恭介『「バカダークファンタジー」としての聖書入門』を読んだ。 特定の信仰に依存せずに聖書が何故読まれてきたのかが垣間見れる本である。

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聖書との初めての出会いは中学生の時であった。 校門の前で恐らく日本国際ギデオン協会の方が聖書を配っていた。 担任の先生が「聖書は文学として読むと面白い」とおっしゃっていたのを覚えている。 結局、もらった聖書は実家のどこかに眠っている。

次の出会いは会社の先輩の結婚式に参列した際に「コリントの信徒への手紙一」の一部が説教された場面である。

時がたち、Twitterで『「バカダークファンタジー」としての聖書入門』の存在を知った。 ちょうど同著者の『仁義なきキリスト教史』は読んでいたので不安なく読めた。

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架神氏の解釈は面白く、自分も聖書を信仰を前提とせずに文字通りに読みたいと思い立った。 『「バカダークファンタジー」としての聖書入門』は岩波訳(岩波文庫ではなく聖書翻訳委員会訳)を主に参照しているが、現在、新品を手に入れるのは難しい。 近くの図書館に蔵書されていたので、それを借りることにした。架神氏は合本版を参照しているが図書館にあるのは分冊版である。 ひとまず「創世記」は読み終えた。初学者はレビ記で挫折するとのことであるが、私はどこまで読み進めることができるのだろうか。

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んだ。

新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んだ。 Twitterで三重大の奥村先生がお勧めしていたので財布を顧みず購入した。

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新井先生の本は昔『コンピュータが仕事を奪う』を読んでとても暗い気分になったことを覚えていた。 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、前半こそ現時点での人工知能技術の能力と限界、東ロボくんプロジェクトなど興味深い内容であるが、後半の全国読解力調査とその結果の考察はやはり暗い気分になるものであった。

数学者らしく慎重に用語の定義をしつつ、帯に煽り気味に書いてある「AIが神になる?(ならない)」「AIが人類を滅ぼす?(滅ぼさない)」「シンギュラリティが到来する?(到来しない)」について論理的に説明しつつ、 東ロボくんプロジェクトの成果から人工知能技術が得意なこと、苦手なことは何かを明らかにする。 そして、人間は人工知能に出来ない仕事ができるか?として大学生の数学力調査、読解力調査と地道な調査を続けて多くの中高生が教科書の内容を読めていないという結果が出る。 人工知能技術の発達、読解力の欠如からなる「最悪のシナリオ」を提示する、という内容。

自分には読解力があるのか、とか数学をきちんと理解できているのだろうか、とか後ろ向きな考えしか出てこないが、何とか2030年あたりでも普通に仕事ができるように足掻いていきたい。

s4e.jp

2018年8月あたりから受験ができる予定らしい。 少し、お金のにおいも感じるものの、受けてみたいものである。

『初めてのPerl 第7版』の査読を担当しました

「リャマ本」の最新版

2018年1月20日にオライリージャパンから『Learning Perl 7th Edition』の邦訳『初めてのPerl 第7版』が発売される。 この本は長年「リャマ本」として親しまれてきた。

www.oreilly.co.jp

この度、邦訳の査読者として参加させていただいた。 オライリーの方から話があったのは2017年11月下旬であった。

原著者たちが実際に行ったトレーニングコースの経験に裏打ちされたテキストであり、基礎からPerlを丁寧に学ぶことができる。 私もPerlを学びながら読み進めた。 感じたこととして、Perlはデフォルトの振る舞いが多く、最初は慣れるのが大変であるが、一度身に着ければ強力な武器になるだろう、と感じた。

原書『Learning Perl』の初版は1993年に出版され、翻訳本が出版されたのは1995年6月のことであるソフトバンク出版事業部から出版されている。オライリージャパンが設立されたのは1995年12月である。 その後、 第2版第3版第5版第6版と翻訳が出版されてきた。 このような歴史ある名著に僅かながらでも携わることができてうれしかった。 2018年となった現在ではRubyPythonといった強力なライバルが存在するが、何故Perlが使われるようになったのかを知るためにも読んでいただければと思う。

余談

第6章「ハッシュ」の「6.2.2 ハッシュの代入」にある訳注(P.113)が気に入っている。 ハッシュの変換例の1つとして逆引きハッシュを取り上げて、注意が述べられている。以下に引用する。

もちろん、これがうまくいくのは、元のハッシュの値がユニークな場合だけだと推測できるでしょう(頭の良い人は科学上の原理から説明できるでしょう) ――そうでない場合には、新しいハッシュでは同じキーが重複してしまいますが、ハッシュにおいてはキーは常にユニークでなければなりません。

私は決して頭は良くはないものの、「科学上の原理」からこの事象の説明を試みた。 Perlのハッシュ(一般に、連想配列)を数学の写像として解釈して訳注を作成した。 学部1年のときにまじめに離散数学を勉強してよかったと感じた。