何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

『ユニコーン企業のひみつ』を読んだ。

スタートラインに立ちたい

オライリージャパンさんから『ユニコーン企業のひみつ』を頂きました。 ありがとうございます。

www.oreilly.co.jp

筆者がSpotifyで勤務して得た経験に基づいてユニコーン企業(評価額が10億ドル規模の企業でありつつスタートアップの様に運営されている企業)の働き方や文化を解説した本である。

せっかく、本を頂いておきながらこんなことを書くのは申し訳ないのだが、読み進めるたびに「うっ頭が」となる辛さがあった。 いつものオライリーの本よりも文字サイズが大きく、A5判212ページで気軽に読める分量であり、読みやすい翻訳であるが、その自分にとっての読書経験は正直言って辛く殴られている感覚であった。 この感覚は別に初めてではなく、過去にバージョン管理がない世界 - 何かを書き留める何かでも経験した痛みである。 「日本の読者の皆さんへ」という邦訳のために書き下ろされたと思われる原著者の言葉が冒頭にあるが、まずそこから大変であった。

これはソフトウェア開発にとっては良い知らせといえます。ですが、競争においては悪い知らせでもあります。 「みんながやっていること」は何の優位にもなりません。 アジャイルはもう「ふつう」なのですから。(邦訳P.vii)

ユニコーン企業のひみつ』としてはアジャイル開発の先にある開発手法や文化の話をする本なのでこのような書きっぷりになるのは当然であるが、読者である私にとっては全くもって「ふつう」ではない。 アジャイルに関してはいくつかの文献を読み、ほんの少しだけの知識はあるが、実践や目撃の経験はない。 私は原著者の考えるスタートラインにすら立っていない。 これは2015年に感じた絶望に近い。

ショックを受けたのは別に序文だけではない。 1章「スタートアップは どこが違うのか」では「期待に応じる機械」という見出しで従来型の企業の働き方を(優劣の問題ではない、としつつも)批判している。 2章「ミッションで目的を与える」は従来の「プロジェクト」(アジャイル開発が前提の!!!)と「ミッション」を対比させながら説明する章である。 原著者は「プロジェクトは(考える)力を奪う」「プロジェクトは間違ったことにフォーカスしている」と説く。 そもそもプロジェクトは納期や予算にフォーカスしているが、それは間違っている、と。

私はスタートラインにすら立っていないし、そもそものソフトウェア開発者としての働き方も間違っているのではないか、と。 それ以降も話は続き、Spotifyにおける当時の組織構成などが説明されるが、そもそもスタートラインにすら立っていない自分にとっては活用も難しい代物であった。 とはいえ、まずはできそうなことをやっていくほかないのである。

ここまで読んだ人が『ユニコーン企業のひみつ』を読みたくなるのかは甚だ不明であるが、少なくとも私のような境遇の方にとっては劇薬になるであろう。 もちろん、スタートラインに立っているような方はその先への歩みを得るためにぜひ読んでいただきたい。