何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

『エレガントなSciPy』の査読を担当しました

興味深い事例と学ぶSciPy

2018年11月10日にオライリージャパンから『Elegant SciPy』の邦訳『エレガントなSciPy』が発売される。 この度、邦訳の査読者として参加させていただいた。 オライリーの方から話があったのは2018年9月中旬であったが、『Elegant SciPy』の話題は2017年のPyCon JPでオライリーの方と雑談をした際に話題に上がっていた。

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具体的な題材を中心に、NumPy、SciPyを中心に科学技術計算をPythonでどのように行うか、を説明している。 題材としては筆者たちの専門である生物系の分野からの採用が多く、序盤から遺伝子の話題が登場する。 とはいえ、生物系の話題に疎くても解説とソースコードを読み解けばNumPy、SciPyのすごさが理解できると思う。 Pythonのバージョンも3系であるのがうれしい限り。

本文中、セルゲイ・プロクジン=ゴルスキーが撮影したカラー写真を復元する題材がある。 同一の被写体を3色のフィルタを通して撮影することでカラー写真を構成する手法である。 その被写体は教会のステンドグラスで、神ヤハウェ使徒ヨハネヨハネの弟子プロコロが描かれている。 以前、読んだ本の影響でヨハネとプロコロの関係を詳しく知りたくなった。 その結果、ヨハネがプロコロを通じて『ヨハネによる福音書』を口述筆記*1している様子を描いたのであろう、ということが分かった。 査読者の指摘としては、プロコロという名前の訳出方法(英語の発音通り?新共同訳に寄せる?)に留まったが、こういう寄り道が楽しいのである。

閑話休題。最近のPython本は機械学習系が多かったが、この本は(scikit-learnも登場するが)Pythonの昔からのお得意様である科学技術計算がメインである。 Web系とも、機械学習系とも違う、科学技術計算の面白さを堪能してほしい。

*1:伝承であり、実際に誰が書いたのかはどのような立場をとるのかによると思う。