何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

『入門 Python 3 第2版』を監訳しました

自立する800ページ

2021年3月22日にオライリージャパンから『Introducing Python 2nd Editon』の邦訳である 『入門 Python 3 第2版』が発売される。

www.oreilly.co.jp

この度、邦訳の監訳を務めた。 話があったのは2020年2月頃、監訳作業は2020年9月から2021年2月頃までの約半年であった。 タイトルの通り、2015年12月に発売された『入門 Python 3』の改訂版である。

構成について

Pythonの入門書であるが、入門した後のことも書かれている本である。 全体として2部構成であり、前半が文法などの解説、後半がPythonを使って何ができるか、という話である。 800ページと聞いてびっくりするかもしれないが、従来の入門書にあたる箇所は270ページなので分厚さに怖気づいてしまう必要はない。 初心者はまず第I部を読み、第II部は面白そうな部分を拾い読みする。 慣れている人はいきなり第II部から入ってもよい。 目次や索引も活用してリファレンスとしても使える。

監訳作業について

監訳と言っても本によってその役割は異なる。 『入門 Python 3 第2版』の場合は翻訳に手を入れて精度を高める監修の役目である。 訳語の調整、ソースコードの調整、ローカライズなど多岐にわたる。 普段?の査読の場合、意見は表明するものの、その意見をどうするかは翻訳者や編集者にその決定を委ねていた。 一方、今回の監訳ではほぼすべて自分でどうするかを決定するの立場であった。 また、「監訳者まえがき」なるものを初めて書いた。 今まで幾度となく「まえがき」や「あとがき」を読んできたが、いざ自分で書くとなるとどうすればいいのか非常に困ってしまった。 邦訳初版の監訳者である斎藤さんの「まえがき」は斎藤さんのプログラミングを学んだ経験が書かれていたので、ひそみに倣って自分の思い出話から書き始めた。

どこで買えるか

今更「どこで買えるか」という話なのか、と思うが、オライリージャパンさんの本はどこの本屋にでもある訳ではない。 オーム社の常設書店のうち、「オライリー・ジャパンの和書特約店」に限られる。

www.ohmsha.co.jp

近くの書店に売っていなくても、オンライン書店で入手できる。

ぜひお手に取って欲しい

仕事を始めて6年程度、Pythonを本格的に使い始めて4年、学生時代を含めるともう少し長くなるが、その経験で得た知識を色々と監訳作業に詰め込んだ。 Pythonの入門書の有力な候補の1冊として、ぜひお手に取って読んでいただければと思う。

おめでたい感じがする干支計算プログラミング

今年の干支は何なのか、ここ数年気にしなくなっていたが、今年は丑年である。 正確には辛丑である。

ja.wikipedia.org

お正月なので、簡単に計算できるPythonスクリプトを書いた。

HEAVENLY_STEMS = {
    0: "庚",
    1: "辛",
    2: "壬",
    3: "癸",
    4: "甲",
    5: "乙",
    6: "丙",
    7: "丁",
    8: "戊",
    9: "己",
}
EARTHLY_BRANCHES = {
    0: "申",
    1: "酉",
    2: "戌",
    3: "亥",
    4: "子",
    5: "丑",
    6: "寅",
    7: "卯",
    8: "辰",
    9: "巳",
    10: "午",
    11: "未",
}

try:
    year = int(input("生まれた年を数字で入力してください:"))
except ValueError:
    print("数字でっつってんだろぉぉ?")
else:
    stem = year % 10
    branch = year % 12
    print(f"あなたの干支は{HEAVENLY_STEMS[stem]}{EARTHLY_BRANCHES[branch]}です。")

Pythonintは全角数字を入れても数値として解釈してくれるが、ドキュメントにはUnicodeのNdをそう解釈するとは書かれていない。 ११११を渡すと1111と解釈してくれるので恐らくint()はNdをよしなに解釈してくれるのだろうが、果たしてどうなのだろう。

2020年に読んだ本

雑な読書記録

買っても読まず、読んでも特に記録を残さずに思い出に残らないので、年単位で読んだ本と簡単な感想を残しておくことにしよう。 いつも、書評を書こうと思い立つもすぐに断念してしまうので「簡単な感想」にとどめてそのハードルを下げるのが目的である。

横田増生ユニクロ潜入一年』(文藝春秋

books.bunshun.jp

話題になったのは2017年で2020年に読むのはと思うかもしれないが色々なタイミングで今読むことになった。 筆者の潜入ルポものだと3冊目にあたる。 柳井正社長の「うちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたい」という言葉に応じて約1年間ユニクロの複数の店舗でアルバイトした記録と下請けである中国やカンボジアの工場で働く人々への取材からなる。 ワンマン体質と徹底した守秘義務は読んでいて非常に不気味である。 柳井社長の部長会議における発言が一貫していないように思われ、君子は豹変するなのか、朝令暮改なのかがわからなくなった。

横田増生潜入ルポ amazon帝国』(小学館

www.hanmoto.com

筆者の潜入ルポもの4冊目。 アマゾンの小田原の倉庫で働いた記録とヨーロッパの取材、マーケットプレイス周辺に潜む怪しい人たちへの取材からなる。 筆者が「ユニクロが「ろくでなし」ならばアマゾンは「ひとでなし」」と表現した通り、秒刻みで終われるピッキング作業、雇用の多重構造による責任の曖昧化などが描かれている。 難癖をつけるならば、筆者はIT周りにそれほど強くないらしく、AWSに関する記述は微妙であった。 AWSのアマゾンっぽいふるまいとしてはオープンソースの扱い方にあると思うのであるが、その辺はITに強いノンフィクションライターの出現を待つほかないのだろうか。

横田増生ユニクロ帝国の光と影』(文藝春秋

books.bunshun.jp

ユニクロ潜入一年』よりも時系列としては前であり、2010年頃の話題なので古い箇所もあるが今もなお読むべき価値がある。 批判的に書かれた企業や経営者に関する本でユニクロがSPAで合理化を進めて大企業へと成長する光の部分と疲弊する現場と言行が一致しない経営者という影が描かれている。 『ユニクロ潜入一年』は変化球であるが『ユニクロ帝国の光と影』は正攻法の取材からなる。 GAPを目標にしてSAPを進め、GAPの凋落とともに綻びが、というのはどの業界にもありうる話である。

世阿弥風姿花伝』(ちくま学芸文庫

www.chikumashobo.co.jp

佐藤正英翻訳。 以前、新編日本古典文学全集の『連歌論集 能楽論集 俳論集』を読んだことがあり、そこで読んだ風姿花伝は非常に面白かった思い出があったのだが、 このちくま学芸文庫風姿花伝はその面白さはなく、すぐに眠くなってしまった。なぜ? 最初の「年来稽古条々」で読むのを断念した。なぜ? 翻訳者の違いによるものならば、「日本の古典をよむ」シリーズの風姿花伝にすればよいのか。

日本の古典をよむ(17) 風姿花伝 謡曲名作選』(小学館

www.shogakukan.co.jp

とりあえず表章氏が編集した『風姿花伝』を読んだ。 現代語訳は「タイミング」など大胆に外来語を使うなど現代人が読むのに適した訳文となっていて、ちくま学芸文庫版よりも読みやすいと感じる。 新編日本古典文学全集は持ち歩くのが大変(持ち歩いたこともある)で現代語訳は小さいので原文を気にせず読むにはなかなか大変であるが、「日本の古典をよむ」シリーズのサイズならば持ち運びも簡単である。

別役実別役実のコント教室』(白水社

www.hakusuisha.co.jp

新宿紀伊國屋の4Fをウロウロしていると、紀伊國屋ホールから演劇の声が聞こえてきたので演劇関係の本が置いてあるコーナーに向かったら、最近、別役実氏がなくなった、読んだことないけど、と思い出した。 本棚を眺めると、『ハムレット』以外の戯曲を読んだことがなくても読めそうな気がしてきたので手に取った。 笑える(不条理な)コント(寸劇)の書き方を通して戯曲の書き方を学ぶ、といった本で講義と講義内で提出された作品の批評からなる。 もちろん、劇作家や放送作家になりたいわけではないが、非常に面白く読めた。 引用されていた本も1冊買ってしまった。

ウージェーヌ・イヨネスコ『ベスト・オブ・イヨネスコ 授業/犀』(白水社

www.hakusuisha.co.jp

別役実のコント教室』で取り上げられていたので、表題作の『授業』だけ読んだ。 詳細はネタバレになるし、不条理演劇としては有名かつ古典なので検索すればあらすじや実際の動画が出てくると思うので割愛するが、フランスかルーマニアの学制を前提としているのか、 日本人にはちょっとわかりにくい舞台設定なので、これを翻案して…という時間があればいいのだが。

酒井大輔『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』(日経BP

shop.nikkeibp.co.jp

この手の業界本?は批判的にまとめられた良書もあれば単なるヨイショ本まで玉石混交なのだが、これは面白い本だった。 同じ業界であるユニクロに関する本を読んだ経験も合わさってなぜワークマンがうまくいっているのかがわかる気がした。

Steve McConnell 『More Effective Agile ~ “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標』(日経BP

www.nikkeibp.co.jp

ティーブ・マコネル氏の最新刊。 『アジャイルイントロダクション』と同様に批判的というか活用例に裏打ちされた記述に基づくアジャイル本。 所々心に刺さる箇所があり、1回読んで満足するのではなくて何度も読んで実践する必要があるなと感じた。

すいのこ『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館

www.shogakukan.co.jp

学部の同級生が編集した本。

xaro.hatenablog.jp

フレクスナー 、ダイクラーフ『「役に立たない」科学が役に立つ』(東京大学出版会

www.utp.or.jp

強いデジャブを感じた本

xaro.hatenablog.jp