何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

『入門 監視』を読んだ。

さくっと読めて考えるべきポイントが掴める本

オライリージャパンから出版された『Pratical Monitoring』の翻訳である『入門 監視』を読んだ。

www.oreilly.co.jp

発売される前からそのシンプルかつ「なぜモニタリングではなく監視なのか」という疑問が湧くタイトルで興味を持っていた。 今回、いつもお世話になっている編集の方からご献本いただいたので、かつ、せっかく読んだので記録を残していこうと思い、このエントリを書く。

面白かったポイント

面白い観点は、5章の「ビジネスを監視する」である。 従来、監視というとOSのメトリクスやヘルスチェックなどシステム寄りの監視ことしか頭になかった。 ビジネスのメトリクスという観点は非常に面白く、現在自分が関わっている案件でも取り入れることができないのか考えてみたい。

ちょっと気になったところ

本書では「デザインパターン」という用語をクリストファー・アレグザンダーが提唱した「パタン・ランゲージ」の文脈ではなく、単なる「よいやり方」という意味で使っていることが多少気になった。もっとも、この指摘は「デザインパターン」という用語の定義を厳密に考えようとするとひっかかるに過ぎず、「よいやり方」でも十分面白い内容である。

最後に

よく手にする技術書は300ページやら500ページなど重厚な本が多い。 この『入門 監視』はサイズがA5判で200ページとコンパクトである。 では中身が薄いか、というと、もちろんそんなことはなくさくっと読めて考えるべきポイントが掴める本である。 特定のツールの使い方ではないので、あと数年は役に立つ内容である。

監視は全員がやるべき仕事であり、チームや部署内での役割ではありません。

とあるように、全員が読む本である。 ぜひ買って読んでほしい。

蛇足

A5判で200ページとコンパクトな本だとすぐに読めて嬉しいのでオライリージャパンからこの手の本がたくさん出てほしい。

PMは何の略語なのか

広がる解釈の可能性

ソフトウェア開発やWeb開発の業界に身を置いていると、PMという略語を耳にする機会が非常に多い。 一般に、PMはプロジェクトマネージャーの略語として使われている。 現に、私もPMをプロジェクトマネージャーの意味で使用していた。

しかし、PMと呼ばれる人たちを注意深く観察していると、必ずしもプロジェクトマネージャーではない、別のPMが存在する、ということがわかってきた。 自ら経験した事柄、周辺の人たちとの雑談からPMの分類が出来ると思い、以下にまとめてみる。

【プロジェクトマネージャー】(Project Manager)

プロジェクトの計画・管理・遂行に関する責任者。

【プロジェクトメッセンジャー】(Project Messenger)

プロジェクトの情報伝達に関する責任者。 主に渉外を務め、先方の主張をそのまま伝えるのが主な役目である。 先方や開発側の主張を正確に伝えるTCPを採用しているPMからパケットロスが発生するIPを採用するPMまでプロトコルの選択にPMの個性が現れる。 先方の情報は通すが開発側からの情報は通さないファイアーウォールを導入しているPMもいる。

【プロジェクトミキサー】(Project Mixer)

プロジェクトをかき乱す責任者。 先方の要求を伝えない、仕様を毎日変える、リソース管理をしないなどかき乱す手法が豊富にあり、どの作戦を使うのかがプロジェクトミキサーの腕の見せ所である。

【プロジェクトマッシャー】(Project Masher)

プロジェクトを潰す責任者。 派手な所作が多くPMの華と呼ばれる。 プロジェクトの潰し方に個性が現れ、突然出社しなくなる「失踪」、関係者を恫喝して過重労働に追い込む「デスマーチ」など誰も幸せにならない手法が大半である。

【プロジェクトモッカー】(Project Mocker)

プロジェクトマネージャーのモックを務める人物。 プロジェクトを進行させるためにプロジェクトマネージャーを用意する必要があるが、コストが高くついたり用意できない場合に登場する。 一見、本物のプロジェクトマネージャーのような振る舞いをするのであるが所詮モックであり、インタフェースは存在するが定数を返すだけという場合がほとんどである。

【プロジェクトモブ】(Project Mob)

プロジェクトに紛れ込んだ人物。 会議や開発の風景として活躍する。

我々はどう立ち向かうべきか

PMを突き放すひどいエントリであるが、PMは一緒に開発をする仲間である。 少なくとも、悪意を持ってプロジェクトをつぶすPMは排除すべきであるが、変な方向に向かわないようにしていきたい。 また、プロジェクトモブは開発側の人間もなり得る。 関わっているプロジェクトには積極的に関わっていきたい。

『pandasクックブック』の査読を担当しました

コンパクトなクックブック

2019年2月5日*1に朝倉書店から『Pandas Cookbook』の邦訳『pandasクックブック』が発売される。 この度、邦訳の査読者として参加させていただいた。 翻訳者の黒川さんから話があったのは2018年8月であった。

www.asakura.co.jp

pandasの豊富な機能をクックブック形式で知ることができる本である。 pandasの場合、できることが多すぎてなかなか全貌を知るのが大変である。 クックブックなのでやりたいことベースで方法を探せるのが便利である。 ぜひ、「Pythonによるデータ分析入門」とセットで机上に置いてデータ分析に役立てて欲しい。

2018年10月から12月は『エレガントなSciPy』『Python機械学習クックブック』と並行して読み進めていた。 そのため、当初約束していた期限を派手(1週間)に遅れる事態となってしまった。すみません...。 その分、裏付け作業を丁寧に行い、黒川さんを通して原著のTypoなどを発見できて改善できたのがよかった。

昨年の仕事納めは朝倉書店まで赴いて索引のチェックのお手伝いをさせていただいた。 オライリージャパンの本の索引は編集者の方にお任せで索引を熟読したことがなかった。 今回、索引を熟読して意外と発見(typoなど)があり、とても面白かった。 なお、当時は喉が痛く鼻水と痰がでる状態で体調が悪く、年末年始読むはずだった再校はほとんど読めなかった。 「原稿を細かくチェック」できたのは最初だけであった。すみません...。

朝倉書店は学術書や理工系の本の出版社である。 私も学生時代に何冊か購入している。 コンピュータ系の出版社よりも常備している書店が少ないので、大きめの書店に向かうかインターネット経由で買い求めて欲しい。

追記(2019年2月10日)

追記(2019年3月12日)

nikkieさんにご紹介いただきました!(反映するのが遅れてしまいました。すみません...。)

gitpitch.com

どりらんさんにレビューしていただきました!(気づくのが遅れてしまいました。すみません...。)

drillan.github.io

*1:出版社Webサイトから。実際は2月4日に東大駒場生協に入荷している。