何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んだ。

新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んだ。 Twitterで三重大の奥村先生がお勧めしていたので財布を顧みず購入した。

store.toyokeizai.net

新井先生の本は昔『コンピュータが仕事を奪う』を読んでとても暗い気分になったことを覚えていた。 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、前半こそ現時点での人工知能技術の能力と限界、東ロボくんプロジェクトなど興味深い内容であるが、後半の全国読解力調査とその結果の考察はやはり暗い気分になるものであった。

数学者らしく慎重に用語の定義をしつつ、帯に煽り気味に書いてある「AIが神になる?(ならない)」「AIが人類を滅ぼす?(滅ぼさない)」「シンギュラリティが到来する?(到来しない)」について論理的に説明しつつ、 東ロボくんプロジェクトの成果から人工知能技術が得意なこと、苦手なことは何かを明らかにする。 そして、人間は人工知能に出来ない仕事ができるか?として大学生の数学力調査、読解力調査と地道な調査を続けて多くの中高生が教科書の内容を読めていないという結果が出る。 人工知能技術の発達、読解力の欠如からなる「最悪のシナリオ」を提示する、という内容。

自分には読解力があるのか、とか数学をきちんと理解できているのだろうか、とか後ろ向きな考えしか出てこないが、何とか2030年あたりでも普通に仕事ができるように足掻いていきたい。

s4e.jp

2018年8月あたりから受験ができる予定らしい。 少し、お金のにおいも感じるものの、受けてみたいものである。

『初めてのPerl 第7版』の査読を担当しました

「リャマ本」の最新版

2018年1月20日にオライリージャパンから『Learning Perl 7th Edition』の邦訳『初めてのPerl 第7版』が発売される。 この本は長年「リャマ本」として親しまれてきた。

www.oreilly.co.jp

この度、邦訳の査読者として参加させていただいた。 オライリーの方から話があったのは2017年11月下旬であった。

原著者たちが実際に行ったトレーニングコースの経験に裏打ちされたテキストであり、基礎からPerlを丁寧に学ぶことができる。 私もPerlを学びながら読み進めた。 感じたこととして、Perlはデフォルトの振る舞いが多く、最初は慣れるのが大変であるが、一度身に着ければ強力な武器になるだろう、と感じた。

原書『Learning Perl』の初版は1993年に出版され、翻訳本が出版されたのは1995年6月のことであるソフトバンク出版事業部から出版されている。オライリージャパンが設立されたのは1995年12月である。 その後、 第2版第3版第5版第6版と翻訳が出版されてきた。 このような歴史ある名著に僅かながらでも携わることができてうれしかった。 2018年となった現在ではRubyPythonといった強力なライバルが存在するが、何故Perlが使われるようになったのかを知るためにも読んでいただければと思う。

余談

第6章「ハッシュ」の「6.2.2 ハッシュの代入」にある訳注(P.113)が気に入っている。 ハッシュの変換例の1つとして逆引きハッシュを取り上げて、注意が述べられている。以下に引用する。

もちろん、これがうまくいくのは、元のハッシュの値がユニークな場合だけだと推測できるでしょう(頭の良い人は科学上の原理から説明できるでしょう) ――そうでない場合には、新しいハッシュでは同じキーが重複してしまいますが、ハッシュにおいてはキーは常にユニークでなければなりません。

私は決して頭は良くはないものの、「科学上の原理」からこの事象の説明を試みた。 Perlのハッシュ(一般に、連想配列)を数学の写像として解釈して訳注を作成した。 学部1年のときにまじめに離散数学を勉強してよかったと感じた。

Python Boot Camp in 埼玉に参加しました

大宮は近かったので

去る2017年12月16日に埼玉県さいたま市大宮区にてPython Boot Camp in 埼玉が行われた。

pyconjp.connpass.com

今回、TAとして参加した。 現在の居住と大宮がそれなりに近かったから、という不純な動機である。 以前からPython Boot Campの活動はブログやTwitterで知っていたが、参加するチャンスがなかった。 埼玉県で行いたいという現地スタッフの熱意のおかげで参加することができたのである。

参加するにあたって、事前にテキストを読み、いくつか誤植を指摘した。

xaro.hatenablog.jp

事前の準備もよく、当日はTA業を張り切って行うはずであった。 悲劇は家を出て数十メートル歩いた時点で発生した。

ぎっくり腰である。

鞄に重量のあるノートPCを入れて右肩にかけたら右腰に違和感を感じた。 この時点で勇気をもって引き返すべきであったかもしれない。 不純な動機の罰が当たったのかもしれない。

電車に乗ってランチミーティングが始まるころから痛みが強くなり、会場に向かう途中で歩行すらきつい状態になった。 会場設営すらできず、スタッフやTAの方に気を使わせしまう事態となってしまった。 腰が痛いなりにもTA業をやろうとオンライン対応(SlackやTwitter)に専念しようと思ったものの、会場のwifiが弱く、オンライン経由の質問は皆無であった。 何とか会場下手側(講師からみて右手側)の質問対応をこなすのが精一杯であった。 埼玉の土地の利ですごいTAがたくさんいらっしゃったのが救いであった。 懇親会は激痛で参加できず、脂汗をかきながらタクシープールへ向かった。 大宮駅前にあった15メートル程度の横断歩道を渡る前に5分立ち止まり、何とか渡るもその後10分ほどポールのそばから動くことができなかった。

その後、受診と安静を経て難なく歩行ができる段階まで回復したが、まだ通勤時の荷物は重量を減らすために最低限のものしか携帯しない。 腰を手で押さえて少しでも痛みをそらすために姿勢をよくしていたが、その様子が「受講生を見守るTA」のように見えて申し訳ない気持ちになった。

pyconjp.blogspot.jp

閑話休題(長い)。実際にTA業をやって何を感じたか。

ランチミーティングで「ディレクトリ」は知っているけれども「カレントディレクトリ」という概念がわかっていない初心者が多い、という話を聞いていた。 なるほど、と思いつつまさか、とも思っていたが、間違っていたのは自分であった。 自分がプログラミングを始めたのは学部生のとき(遅い!!!)であるが、最初はプログラミングを行わず、コンピュータリテラシーと呼ばれる講義を受けていた。 LinuxではなくSolaris、つまりUNIXlscd などの基礎を学んでいた。ひたすらコマンドライン上の操作を行うので嫌でも慣れる。 受講生のバックラウンドにもよるが、プログラミングを学ぶ前に「コンピュータリテラシー」を学ぶ機会があればもっとスムーズにプログラミングが勉強できるだろう、と感じた。

何のためにプログラミングを学ぶのかは人それぞれであるが、法律や公序良俗に反しない目的ならば周りにいるできる人たち、Slackのチャンネルに助けてくれる人たちが必ずいるので 「求めよ、さらば与えられん」の精神でいけばよい方向へ向かうことができるのではないだろうか。