何かを書き留める何か

数学や読んだ本について書く何かです。最近は社会人として生き残りの術を学ぶ日々です。

Pycon JP 2016 1日目に参加しました。

去る2016年9月21日に早大理工にてPyCon JP 2016の1日目が行われた。 2014, 2015に続いて3回連続3回目の参加である。 記憶が新鮮なうちに参加した講演の感想をまとめておきたい。

Keynote Jessica McKellar

会場入りするタイミングが悪く既に同時通訳がある席に座ることができず、あまり内容を理解することができなかった。 英語ができないとこのように損をするという例である。

Pythonを含む多くのプログラミング言語を扱う処理フレームワークとパターン Hironori Washizaki

早大理工の鷲崎先生の講演で計算機科学やソフトウェア工学の立場からみた話。 やはりアカデミックな内容は面白い。 SWEBOKを活用しないエンジニアに対する、その方法は根拠があるのかという問いかけは胸が痛くなった。 ソフトウェア工学が築き上げてきた知見をどこまで我々は活用することができるのだろうか。 メンバーの共通知として共有できていないと難しいだろうか。

たった一ファイルの python スクリプトから始める OSS 開発入門 Kei Iwasaki

何度かPython Mini Hack-a-thonで岩崎さんの成果物を見ていてすごいなと思っていたが、そのすごさの理由がわかる発表であった。 最初から公開する予定で作成とか、公開する心構えとか、今後マネしたいものがたくさんあった。

14時台の講演

この時間帯は企業ブースで話し込んでいたら開始時刻を過ぎてしまったので企業ブース巡りを行った。 ノベルティをたくさんもらった。あそこまで用意するなど各企業の気合の入れ方が垣間見れたような気分になったような。

パッケージングを支える技術 aodag

普段何も気にせずpip install hogeしているが、その裏で何が起きているのかがわかる講演であった。 もちろん、PEPに公開されている議論なので僕でも追えるはずであるが追う気になれない。 パッケージに対する情熱は一体どこからでてくるのだろうか。

無料でできる、Cloud9上で開発してHerokuにデプロイする手順を共有します Takeshi Sugiyama

蔵書管理アプリをクラウド上のツールで作成し、PaaSにプッシュする。 こう書くと単純であるがそこに至るまでの落とし穴にはまった記録と解決策が生々しい。 数多の落とし穴にはまり脱出した過程は目に見張るものがあった。

Lightning Talks

(名前を記録できていないので、発表順に記載)

1人目は台湾の大学の先生で、日本語以外の言語に対応したカラオケシステムの話。 恐らくトークの内容を圧縮してLTにしたものであり成果物のレベルが高く、歌声を披露するという発表もすごかった。 テレサ・テン歌うんだとその場では思ったが、テレサ・テンは台湾の歌手であった。

2人目は深層学習の師匠探しという自己紹介LTで小気味よいテンポがよかった。 退学者や退職者の調査はネタめいているが重要な研究課題だと思う。

3人目はビットコインPythonを使って簡単に売買できる話で恐らくトークの内容を圧縮してLTにしたもの。 使いやすいツールがあると一気にビットコインが広まるのだろうか。

5人目はPython天文学の話。 天文学というか理論物理は数値計算ゴリゴリやるイメージがあるのでNumpyなどは相性がよいだろうと思っていたがすばる天文台Pythonで動いているとは。 博士号の活用方法としての団体という面でも興味深かった。

…4人目?はて何のことやら…。

【追記 2017年1月30日】

今更ですが、スライドをアップロードしました。

speakerdeck.com

ただし、このスライドは当日Jupyter Notebookで作成して発表に使ったスライドを元にBeamerで再作成した復刻版となります。 スライドの復刻版とは一体。

『荘子 外篇』を読んで

荘子 内篇』は学生時代の愛読書の1つであるが、『外篇』は読んだことがなかった。

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何故読まなかったのか。それは『荘子』の成立と関係がある。 『荘子』は内篇7章、外篇15章、雑篇11章の全33章であるが、荘子本人の著作とされるのは内篇のみで外篇、雑篇は弟子や後世の人々の著作とされている。 そのため、荘子本人の思想に拘っていた学生時代は内篇しか読もうと思わなかった。 とはいえ、外篇にも内篇の思想に基づいた寓話や他の思想との交流を踏まえた記述など興味深い話も多い。 そこで今回、通勤時間に外篇を通読した。

荘子』は『論語』を相当読み込んだ上でその精神を批判している。 その中で興味深いものを取り上げる。

孔子、行年五十有一にして道を聞かず。(天運篇 五)

これは『論語』為政篇の一節「五十にして天命を知る」が元ネタである。

幸いなるかな、子の治世の君に遇わざるや。夫れ六経は、先王の陳迹なり。豈に其の迹する所以ならんや。今、子の言う所は猶お迹のごときなり。夫れ迹は、履の出だす所なるも、而も迹は豈に履ならんや。(天運篇 七)

六経は足跡に過ぎず、足跡が大事ではなく足跡をもたらした作用こそが大事であるという老子孔子への返答。思い当たる節がたくさんあって世に広めたい一説。

儒家墨家への批判、『老子』との融合、『内篇』の祖述が中心であるが、やはり『荘子』は面白い。

『数学者たちの楽園: 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』を読んだ

Twitterかどこかで『数学者たちの楽園』の話を聞いたのでみんな大好き紀伊國屋書店新宿本店の4Fで購入した。 サイモン・シンは『フェルマーの最終定理』以来であろうか。『暗号解読』も読んだことがあるかもしれない。

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内容はアニメ『ザ・シンプソンズ』に埋め込まれた数学ネタ(理物もあったかな?)と脚本家たちに迫るドキュメンタリー。 扱われる数学ネタはよく知られているものばかりで1729という数字をみて、ああタクシー数はいはいという人には物足りないと思うが、それをアニメの中に埋め込んだ脚本家の話は中々面白い。

博士号を取った人間が脚本家になるという道はアメリカでもどれだけ一般的な人生なのかが気になった。 Monty Pythonの面々も弁護士だったり医者、歴史学者が紛れているから欧米ではインテリと呼ばれる人たちがコメディの世界へ入るのは一般的なのだろうか。 日本で大卒の芸人は見たことがあるけれども修士号、博士号の芸人は見たことがない。

大学である程度数学を学んでしまった人間には物足りないが高校生あたりにはかなりおすすめだと思う。 新潮社なので、そのうち新潮文庫入りすると思う。文庫ならぜひ買ってほしい。単行本だと…ちょっと高いので親か高校の司書さんにタレこんで買ってほしい。